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日本の金融技術が低くても、より低い国から見れば技術レベルは進んで見える。
そういう国では日本勢でも競争力を維持できる。
日本より金融技術力が高い欧米勢の進出が遅れているようなニッチ市場の開拓戦略を考えないと、生き残りは難しい。
もちろんアジアの一部は、今はニッチ市場かもしれないが潜在可能性は大きい。
インドネシア、ミャンマー、イランなどは、今は難しい市場かもしれないが、有力市場に育っている可能性は小さくない。
回年の単位でどう生き残りを図るのか、長期的な戦略の構築が欠かせない。
金融行政にも独自の哲学が必要だ。
不良債権問題からの脱出に取り組んでいたときと、金融商品取引法などの消費者視点の金融制度構築に取り組んでいたときは目標が明確だったが、それ以降は金融行政の軸が定まらない。
とりわけ東京市場の国際化をめざす政策は、欧米の後追いが中心で独自の哲学はなかった。
また、金融や不動産業者が市場の国際化に便乗して利益を上げようとする姿勢が目立ち、利用者に主眼を置いた行政姿勢は後退してしまった。
金融庁が市場強化プランを作るにあたって実施したのは、金融機関への規制緩和項目のヒアリングだったが、聞かれた外資系金融機関のパンカーが「まるで御用聞きみたいだった」と振り返るほどのものだった。
金融行政の基本哲学は、利用者の保護であり続けるべきだ。
業者の利益のため、国民を犠牲にすべきではない。
銀行などが主張する欧米のルールは、金融機関が利用者から利益を吸い上げるモデルであり、それはサブプライムローン問題で破綻した。
欧米は消費者保護強化にカジを切っており、日本も国民のための金融行政を再構築する必要がある。
政府が掲げてきた「貯蓄から投資」の流れも再点検の必要がある。
個人の金融資産は1500兆円あり、その半分以上が現預金に滞留している。
その資金を動かして経済の活性化に利用することは悪いことではない。
ただ証券会社などが個人金融資産の受け皿と力を入れる投資信託の手数料は、販売手数料、信託手数料とも国際的にかなり高い水準のままだ。
証券会社が1500兆円の活用に熱心なのは、仮にその3%の手数料が取れれば、毎年4・5兆円の利益を生み出す宝の山だからにほかならない。
証券会社の勧めに応じて投資信託を買えば、1500兆円はあっという間に半減しかねない。
政府が1500兆円の利用を促したいなら、利用者が高い手数料をむしり取られないよう、業者を指導するべきだ。
ただ金融庁がどの程度利用者保護を徹底するかは不透明で、利用者は業者に手数料をむしり取られない自己防衛が欠かせない。
2007年の市場強化プランの中身を見ると、REITに海外投資を認めたり、情報開示の極めて緩い株式市場の開設を認めたり、保険会社に本格的な商品取引を容認したりと、身の毛のよだつような案が並んでいる。
日本では、金融機関やその利益を代弁するような学者などにそそのかされて、業者の利益を高めるための規制緩和が実施されてきた。
今回の危機対応でも哲学はなかった。
最もひどいのはREITの救済である。
REITは、銀行などから資金を借りてレパレッジを利かせて不動産投資するハイリスク・ハイリターン投資だ。
その投機の失敗に対して、日本政策投資銀行などが出資するファンドでREITに借り換え資金を融資する。
投機の失敗を、税金に由来する公的な資金で穴埋めするのだ。
規制緩和は金融の付加価値を高めるためには不可欠で、それ自体が否定されるわけではない。
しかし金融危機で明らかになったのは、規制緩和が社会の付加価値を高めるためではなく、金融機関の利益を極大化するために実施された現実である。
金融は、そもそも社会経済の発展を支える立場にある。
規制緩和も社会経済のためになるように進める必要がある。
付加価値を高めるのは金融機関そのものではなく、その思恵を受けるべき社会経済である。
経済社会に貢献できるものにかぎって、規制緩和は進めなければならない。
日本は、中長期的な視点で金融の立ち位置を見直すべきときに来ている。
金融分野では欧米を追いかけ規制緩和を進めてきたが、モデルの欧米の金融システムが崩壊した。
日本はアジアの中心だったが、近いうちにGDPで中国に抜かれる。
すでにアジアの中心的な金融市場の地位は、香港などに移っている。
G・Sによると2050年までに日本は経済規模で中園、インドだけでなくインドネシアにも抜かれる。
さらに韓国と北朝鮮がうまく統一されれば、日本は統一韓国・北朝鮮にも抜かれ、アジア5位の固に転落する。
金融ビジネスは経済規模に比して大きくなるため、日本の金融市場の魅力はアジアで5番目にすぎなくなることを意味している。
日本は少子高齢化が進み、アジアに依拠しないと生き残りは難しい。
しかしアジアの中では中国とインドという2つの核が台頭し、日本の地位は低下する。
地位が低下してもなお一定の役割を担えるような分野は何なのか。
規模では勝てない中国やインドに対抗できるのはどういう戦略か、を考える必要がある。
金融業を営むうえで一番大切なのは情報で、アジアと生きるにはアジアの情報は不可欠だ。
欧米ばかりを向いて東京にいくら欧米の情報を集めてみても、ほとんど役に立たない。
必要なのは中園、インド、パキスタン、ミャンマーなど、アジア全域をカバーする広く深い情報にほかならない。
通貨についても、基本的な考え方を変える必要がある。
世界の通貨体制はドル・ユーロの2大通貨体制であり、円はポンドについで4番目の通貨でしかない。
経済力を考えれば将来、人民元がドル・ユーロと並ぶ通貨になる可能性がある。
場合によってはアジア通貨単位が誕生するかもしれないが、その中心は人民元であって円ではない。
日本は円を捨てる覚悟が必要だ。
場合によっては中国を支え、アジアの通貨誕生を後押しする必要があるかもしれない。
日本は金融の一流国ではない。
ただアジアがまとまれば、世界の金融界で一流の地位を占められる。
アジアとしては欧米と対等の発言力を確保することは可能であり、日本はその一員としての役割をより重視すべきだろう。
金融では日米欧という枠組みは形骸化しつつある。
日本はアジアの代表選手でもなくなりつつある。
新しい環境下で金融をどう立て直すのか。
実は日本は、危機で揺れた欧米以上に金融の見直しが迫られているのである。
ピッツパーグ・サミットの直前、MUF・グループのT社長はインタビューで「時代は大きな転換点にある」との認識を示した。
新しい時代は金融危機の異常(アブノーマル)から抜け出した「ニューノーマル(新しい正常)」で、その特徴として「実体経済が主で金融はそれを支える」「レパレッジを解消するデ・レパレッジが進む」「官が企業支援にまで介入する新しい官民の関係が現れる」の3点を指摘。
危機後のニューノーマルは、危機前の「オールドノーマル」とは異なり、金融機関経営の舵取りも新しい状況に適応させていく決意を示した。
ニューノーマルという考え方自体は、2009年5月に米資産運用大手PIMCOのM・E最高経営責任者(CEO)が提起したものだ。
危機を経て金融システムはデ・レパレッジ、デ・グローバリゼーシヨン、リ・レギュレーションの色彩を帯びると主張する。
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